大阪大学大学院 人間科学研究科共生学系福祉社会論
社会保障や高齢者・障がいのある人・子どもの福祉、市民社会に関する研究。

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現在の主な研究活動

(1) 大阪大学国際共同研究促進プログラム(タイプA)2019-2022年度

超高齢社会と国際移民の時代における「ケア」と「社会」と「テクノロジー」のよりよい関係づくりに向けた国際共同研究

 Osaka University International Joint Research Promotion Program (Type A) 2019-2022

International Joint Research of Social Science for Leading Successful Collaboration among “Caring”, “Diversity” and “Technology” in the Super-Aging Society

【概要】

  • 本研究は、ドイツ・スウェーデン・日本を対象に、超高齢社会と国際移民の時代における「ケア」と「社会」と「テクノロジー」のよりよい関係づくりを目指す国際共同研究である。
  • 背景には、各国で今日生じている、次のようなグローバルな課題やその対応策の模索がある。例えば、国境を越える人の移動の拡大による多文化共生社会の実現、超高齢社会における国境なき社会保障への挑戦、Society5.0を前提とする社会科学の探求、IoTAIによるウェルフェア・テクノロジーの開発による自律・自立への貢献、である。

【Outline】

  • This international joint research program investigates and explores better relationships among “care”, “society” and “technology” in the age of the super-aging society and international migration.
  • Current and common global issues and solutions for them occurring in various countries are the backgrounds of the study as follows: how to realize multicultural “co-living” (kyo-sei) society caused by human mobility across national borders; how to face social security/welfare challenges without borders in the super-ageing society; how to explore social sciences based on the recognition of “Society 5.0”; and how to contribute to independent living by developing welfare technology with IoT and AI.

【目的】

  • (1)これまで築いてきた学術交流協定のネットワークを活かし、ドイツ、スウェーデン、日本を調査地とし、超高齢社会と国際移民の時代の「ケア」「社会」「テクノロジー」を巡る議論、各国の実態、研究について、現地調査を通じて最新情報を収集し、3カ国の比較分析を行い、新たな社会科学研究領域を開拓する。
  • (2)国際共同研究への参加を通じて、それぞれの国の文化や時代のコンテクストを踏まえた議論ができる、高い国際性を持つ若手研究者を育成する。

【Objective】

  • (1)To investigate the latest discussion, reality and research regarding “care”, “society” and “technology” in the age of super-aging society and international migration through field study in Germany, Sweden and Japan based on the already developed network academic exchange agreement, to conduct comparative analysis of the three countries, and to explore a new social science research area.
  • (2) To train early career researchers with a high degree of internationality who will then be able to discuss the aforementioned topics, based on the contexts of each country, culture and time period by having them participating in international joint research.

【共同研究チーム メンバー】Joint Research Team Members
氏 名
Name
所属 / 職
Affiliation / Position
現在の専門、役割分担
Research Area, Role in the Project
(研究代表者)
representative
斉藤 弥生
Yayoi Saito
人間科学研究科/教授
Graduate school of human sciences, Osaka
University/Professor
専門:社会福祉学・政治学
役割分担:研究統括・「ケア」研究
Research Area: social welfare, politics
Role: research leader, “care” research
園山 大祐
Daisuke Sonoyama
人間科学研究科/教授
Graduate school of human sciences, Osaka
University/Professor
専門:比較教育学
役割分担:「ダイバーシティ・マネジメント」研究
Research Area: comparative education
Role: diversity, management” research
石黒 暢
Nobu Ishiguro
言語文化研究科/教授
Graduate school of language and culture, Osaka
University/Professor
専門:社会福祉学・社会学
役割分担:「ウェルフェア・テクノロジー」研究
Research Area: social welfare, sociology
Role: “welfare technology” research
(招へい教授)
Guest Professor
島田 信吾
Shingo Shimada
デユッセルドルフ大学(ドイツ)/教授
Heinrich-Heine-Universität Düsseldorf
/Professor
 
(招へい教授)
Guest Professor
クライン バーバラ
Barbara Klein
フランクフルト応用科学大学(ドイツ)/教授
Frankfurt University of Applied Sciences
/ Professor
 
(招へい准教授)
Guest Associate Professor
ヴァムスタッド ヨハン
マーティーアス
Johan Vamstad Matias
エーシュタ・シュンダール・ブレッケ大学 (スウェーデン)/准教授
Ersta Sköndal Bräcke University College
/ Associate Professor
 
(招へい研究員)
Guest Researcher
ルドゲラ・リユーリッヒ
Ludgera Lewerich
デユッセルドルフ大学(ドイツ)/ 助教
Heinrich-Heine-Universität Düsseldorf
/Assistant Professor
 

(2) 社会的企業が供給する医療・介護に関する研究

多くの先進諸国の医療や介護サービス供給において準市場化が定着する中で、理想とされる福祉多元主義が実現できず、営利企業による市場の寡占化が進む傾向にある。社会的企業(social enterprise)が供給する福祉サービスは利用者の満足度も高く、同時に地域社会に豊かな社会的価値を生み出している。中山間地域では雇用を生み、都市部では職員のやりがいや利用者のエンパワーメントに大きく寄与していることが先行研究でも示されている。Victor A. Pestoff教授(エーシュタ・シュンダール単科大学客員教授・スウェーデン/元本学招へい教授)、Johan Vamstad准教授(同大学准教授/本学元特任准教授)とともに、日本国内のJA厚生連、医療生協、生協総合研究所の協力を得て、フィールド調査を行った。(科研費補助金、三菱財団助成金大阪大学国際共同研究促進事業による)

(3) 高齢者介護の国際比較研究(北欧4カ国、ドイツ)

社会保障分野の国際比較研究では統計に基づく量的比較が主流である。しかし社会保障の中でも介護はその国の歴史と文化や人々の生活スタイルに大きな影響を受けるため、在宅サービスといってもその内容は異なり、量的比較に限界がある。そこでMarta Szebehely教授(ストックホルム大学・スウェーデン)らは介護従事者へのアンケート調査をもとに日常的な介護の北欧諸国間比較を実施した(Nord Care Research, 2005)。この調査はカナダ、オーストラリア、ドイツでも実施され、本研究室ではSzebehely教授の協力のもと、石黒暢准教授(大阪大学)との共同研究で、日本でも同じ調査を実施し、北欧諸国との比較を行っている。さらにHildegard Theobald教授(フェヒタ大学・ドイツ)とともに日独の比較研究を行い、デュッセルドルフ大学現代日本研究所Singo Shimada教授との共同研究も開始した。日本調査については、斉藤弥生・石黒暢『高齢者介護に関する国際比較調査(NORDCARE調査)』(報告書、2013年3月)。(科研費補助金による)
■ストックホルム大学ホームページLinkIcon
NORDCARE: Omsorgsvardag i Norden – likheter och skillnader speglade genom omsorgspersonal
(Projektledare: Marta Szebehely)

(4) 小地域における福祉ガバナンスについての研究(島根県松江市)(北欧3カ国、イギリス)

社会福祉分野の国際比較研究では制度の比較研究が主流である。本研究では、上野谷加代子教授(同志社大学)らとの共同研究で、イギリス、北欧諸国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー)、アメリカ、韓国)の各国から抽出した小地域において、支援を要する高齢者、障がい者、子どもが実際にどのようなサービスにより、どのように支援されているのかを、ソーシャルワークの視点から調査し、比較分析し、検討するものである。本研究ではビネットvignette(事例の描写)を用いた調査手法を用いており、生活の実態を捉えようとする研究手法として、ビネット調査のさらなる開発にも取り組んでいる。研究の一部は、上野谷加代子・斉藤弥生編『福祉ガバナンスとソーシャルワーク:ビネット調査による国際比較』(ミネルヴァ書房、2015年2月)として刊行された。(科研費補助金による)
また日本国内では島根県松江市のとりくみについて、公民館を核とした地域福祉活動、生協、農協、社協の連携づくりについて調査研究を約10年間にわたり続けている。

フランクフルト応用科学大学インディペンデントリビングセンター:クライン教授の説明を受ける

フランクフルト応用科学大学(ドイツ)

多文化社会の光景(デュッセルドルフ市)

ウェルフェア・テクノロジーの教育(フランクフルト応用科学大学・障がい者自立生活研究センターにて)
一番左がBarbara Klein教授 (出典:同大学HP)

個人に合わせて調整するモジュール型車いす(スウェーデン)

緊急アラームシステム(スウェーデン)

多文化社会:シリア人会が運営するデイサービス(ストックホルム)

学生にとって、国際共同研究を身近で感じられる環境がつくられます。

  • ・大阪大学で、招へい研究員による英語での講義を受ける機会
  • ・院生などが海外調査や研究交流に関わる機会を得て、国際性の高い若手研究者として育成される機会

大阪大学の中期計画に貢献します。

  • ・「超高齢化社会」、「ウェルフェア・テクノロジー」という日本ならではの視点で、
     Japanese Studiesに取り組みます
  • ・それにより、大阪大学におけるJapanese Studiesの研究拠点の形成に貢献します。

Good opportunities for students to become familiar with international joint research.

  • -Opportunities to participating in overseas research and research cooperation for mainly graduate
  • students to be trained as early researchers with high international skills
  • -Lectures by visiting researchers in English at Osaka University

Contributions to Osaka University Midterm Plan

  • -The perspectives of the project “super- ageing society” and “welfare technology”
    in Japanese Studies are unique
  • -Thus, the project will contribute to Osaka University to form a center of excellence
    in Japanese Studies

ヨハン・バムスタッド氏 略歴

エーシュタ・シュンダール・ブレッケ大学市民社会研究所准教授(政治学博士)/大阪大学招へい准教授。ミッド・スウェーデン大学講師(2008-2009)、ルンド大学政治学部講師(2009)を経て現職。2007年に市民社会研究の第一人者ビクトール・ペストフ氏のもとで、博士論文Governing Welfare: the Third Sector and the Challenges to the Swedish Welfare State(福祉ガバナンス:サードセクターとスウェーデン福祉国家の挑戦)を執筆。主な研究関心は福祉国家研究にあり、比較研究の視点から、学校や高齢者介護への自由選択制度の導入、子どもの政治的権利についての研究など、福祉国家と市民社会の役割とその変容について動向を分析する。ペストフ氏との共著論文にEnrichiing work environment in the welfare service sector: The case of social enterprises in Swedish childcare(福祉サービス部門における労働環境の向上:スウェーデンの保育サービスにみる社会的企業の事例から)2014年などがある。「日本の協同組合による医療介護に関する研究」(研究代表者:斉藤弥生・ビクトール・ペストフ)のメンバーとして、日本の医療福祉生協、厚生連の医療・介護のコ・プロダクションを研究。
(写真および略歴はエーシュタ・シュンダール・ブレッケ大学ホームページより引用)

「赤ちゃんだっこ」のコーナーで:南医療生協の健康まつりを訪問

地域の方々ともちつき:南医療生協の健康まつりを訪問

2019年度に開催した国際セミナー

バーバラ・クライン 教授 Barbara KLEIN

フランフルト応用科学大学社会福祉学部教授、同大学障がい者自立生活研究センター所長
(経済社会学・社会福祉学)。大阪大学招へい教授(2019~2021年)。1985年マインツ大学で経済社会学を学び、1995年ウォルフガング・ゲーテ・フランクフルト大学経済社会学博士。同大学社会学部准教授等を経て現職。専門はウェルフェア・テクノロジー研究で、テクノロジーの活用によるケアの質向上とその効果に焦点をあてた研究領域の第一人者である。動物型コミュニケーションロボットを使った臨床実験を数多く実施しており、社会福祉学とテクノロジーの学際的研究に大きな貢献をしている。最近の著作に、Klein, B. (2017) The role of robotics in social care for older people. in: Clarke, C., Schwannauer, M. &Taylor, J. (eds.) Risk and Resilience: Global learning across the age span. Edinburgh: Dunedin Academic Press. Klein, B., Cook, C. & Moyle, W. (2016) Emotional Robotics in the Career of Older People: A Comparison of Research Findings of PARO and PLEO Intervention in Care Homes from Australia, Germany and the UK. In Domínguez-Rué, E. & Nierling, L. (eds.) AGING AND TECHNOLOGY. Perspectives from the Social Sciences. Bielefeld: transcript publisher, pp. 205-224.などがある。
※フランクフルト応用科学大学は大阪大学と学術交流協定を結んでいます。

島田 信吾 教授 Shingo SHIMADA

ハインリッヒ・ハイネ・デユッセルドルフ大学現代日本研究所教授(社会学)。大阪大学招へい教授( 2019-2021 年)。 1972年に渡独。1988年ミュンスター大学ドイツ言語修士、1991年エアランゲン・ニュールンベルク大学社会学博士、1997年同大学にてハビリタチオン(教授資格)、ハレ・ビッテンベルク大学社会民族学比較文化社会学教授(2003-2005)を経て2005年より現職。また2012年から2015年にはハインリッヒ・ハイネ・デュッセルドルフ大学高齢社会研究センター所長を務める。DAAD-JSPS助成金による研究プロジェクト「老年性認知症と地域ケアの日独比較」(2013-2014)を実施し。最新の共編著にAltersdemenz und lokale Fürsorge. Ein deutsch-japanischer Vergleich(老年性認知症と地域ケア-日独比較)2018、Bielefeldがある。



※ハインリッヒ・ハイネ・デュッセルドルフ大学は大阪大学大学院人間科学研究科と学術交流協定を結んでいます。
※日本学術振興会・科学研究費助成事業(2018-2021年度 基盤研究(B))「持続可能な介護保障と制度「外」介護の展開に関する国際比較調査」(研究代表者:斉藤弥生/大阪大学教授)(課題番号18H00942)と共同で実施する研究である。

※This research is conducted by the use of funds from “International comparative study of sustainable public elder care and the development of “out of the system” care” as self-financing (Research leader: Yayoi Saito, Osaka University, Project No. 18H00942).

【経過】Research progress
2019年度 (Year 2019) Last updated 2019/ /